批判を受けると論点をすり替えながら主張が二転三転とする人がいます。当人は正当な主張をしているつもりかもしれませんが、ああ言えばこう言うといった状態ではた目には支離滅裂です。ゴールポストを移動させると揶揄されることもあります。
どんなに批判されても自分の非は認めません。それどころか批判した相手の批判を始めることもあります。
目次
なぜコロコロと主張が変わるのか
主張が二転三転としたり論点のすり替えをする人には共通した特徴があります。それは認知的不協和を起こしていることです。
偏った思考や価値観を持っていたり思い込みの激しい人ほど認知的不協和を起こしやすくなります。そういった人が少しでも批判されると途端に不協和を起こして攻撃的になります。
誰でも自分は正しいと信じたいものです。しかし偏った思考を持つ人はなにかしら認めたくない現実があります。自己矛盾を抱えつつそれを正当化しなければなりません。非常に困難です。解消方法は偏った思考を改めるか認知的不協和を起こして自己正当化するかです。
そのときに多くの人は認知的不協和を起こします。
認知的不協和を起こした人間は一種の自己洗脳状態に陥っています。自分の信じたいことを信じるようになっています。都合の悪い現実を認めることはありません。そこで「酸っぱいブドウ」のように認知を変えようとします。

実際のブドウは甘いかもしれません。しかし認知的不協和を起こした人間にとってブドウは酸っぱくなければなりません。そこで「ブドウは酸っぱいに違いない」と認知を変えます。
ここで実際にブドウを与えて甘いことを証明したらどうなるのでしょうか。そのときは例えば「すべてのブドウが甘いとは限らない」という主張に変わります。
では、すべてのブドウを与えて甘いことを証明したら? 「食べてる最中に熟して甘くなったに違いない」という主張に変わるのです。
こうやって主張が二転三転とします。自己矛盾を解消するためにいくらでも主張を変えるのです。
私が滅亡を回避した! 世界の滅亡を予言した団体の話
とある団体の指導者はあるときに世界の滅亡を予言します。しかし予言された期日になっても滅亡は起こりませんでした。
普通に考えればその時点で彼の予言は嘘だったとわかるはずです。信じていた人たちも指導者を見限ることでしょう。ところがそうはなりませんでした。
指導者は自分の超常的な力で滅亡を回避したと主張したのです。荒唐無稽です。本当にそんなことができるなら最初から滅亡を回避すればよかったのではないでしょうか。
しかし支持者たちはそれを信じました。彼らは認知的不協和を起こしたため現実を受け入れずに認知を変えてしまったのです。
認知的不協和は悪いことばかりではない
認知的不協和は使い方によっては有益な場合もあります。そのひとつが興味を引くための手段です。
認知的不協和を起こすようなキャッチコピーを作れば興味を引きやすくなります。見た人が不協和を解消しようと注目するからです。
書籍のタイトルで「なぜ○○なのか」といったタイトルを見たことがあるかもしれません。タイトルを見た人間は「なぜ?」と考え不協和が起こります。それを解消するために本を手にとってみたくなるのです。
記事タイトルなどにもよく使われています。意識して見ていると現代社会のあらゆる場面で認知的不協和が利用されているのです。
しかし悪用することもできます。いわゆる炎上商法です。煽るような文面や動画で不協和を起こさせて注意を引こうとします。こういった行為は褒められるものではありません
創作物の認知的不協和
創作物に認知的不協和が使用されていることがあります。製作者が意図して使っているとは限りませんがとても有効な手段です。
ケムリクサで10話で視聴者に起きたこと
アニメ、ケムリクサには視聴者が強い認知的不協和を起こす場面があります。10話の終盤です。
わかばはりんの記憶の葉を見ることになります。わかばがケムリクサを操作すると景色が変わります。それまでわかばたちがいた異質な世界とは違う雰囲気です。アカムシのいない平和そうな世界です。わかばと同じような柄の服を着た少女がベンチに座りケムリクサを操作しています。
このシーンを見た瞬間に視聴者は「えっ、なにが起きた?」という気分になったのではないでしょうか。
そうなると画面に釘付けです。この時点で視聴者には認知的不協和が起きています。そして不協和を解消したくなります。そのためには視聴を続けるしかありません。見事にハマっているのです。
このように視聴者(または読者)が認知的不協和を起こすようなストーリー展開にすることで強力な注意を引くことができます。ヒットする作品にはこういった仕掛けが施されているのです。
おわりに
認知的不協和が起きているときはそれを認知することが重要です。自覚できればコントロールしやすくなります。不毛な論争や炎上に関わってしまったり、欲しくもないものを買ってしまうようなリスクが減ります。
創作活動をしているなら認知的不協和を上手に使うことで物語を盛り上げるような展開を作ることができます。
あらゆる場面で不協和の起きる可能性があります。そのことを意識しながら生活してみるといいのではないでしょうか。